直木賞作家『姫野カオルコ』(姫野嘉兵衛)の応援サイト。ディープな読者も初めての方も大歓迎。

よるねこ・集英社
2002年8月
ホラーの定石に、何気ない日常に潜む得体の知れない魔との邂逅がある。例えば、私ジキルのタレパンダのような日常が、雨漏りの修理で屋根に上がったらトタンが熱くてアチチと手すりのない地上10mの屋根で猫踊り・・・。じゃなくて、屋根に上がった途端に頭の中で渦巻く恐怖(落ちたら死ぬ落ちたら死ぬ・落ちたら・・・以下35回ほど)と日常との落差に愕然とするという、うーむ。

これは例としては全然違うな。しかも、このサイト日記風掲示板を読んでない人には何のことかさっぱりわからんですね。すまんすまん。えーっと。高所作業のプロはこの程度のことは恐くはないでしょう。ロッククライミングをやる人も基本的に怖がっていないように思えます。つまりこのタイプの恐怖は慣れて免疫が出来るのです。

やはり最も恐いのは 理性で判断できないこと、理解という人間の営為が通用しない不条理でしょうね。帯の解説で大森望氏が書いているように、姫野カオルコさんの本書における作家的技術の冴えはひとつの境地に達しています。ここらへんを書き出すとネタばれの危険があるので、うーん・・・読んでのお楽しみに。ところで、これはネタばれに当たらないと思うので、書いてしまいますが・・・。表紙カバーを外すと、 おぉ、よるねこがいっぱい。

よるねこ(この語感が好き)は、八つの短編からなる幻想ホラー小説集。派手に血が飛び散ったりはしませんが、じわじわとあなたの中で恐怖が増殖する作品集です。帯には「映画には絶対できない恐怖と残酷・・・あなたの潜在意識を煽る、姫野カオルコの新境地!」とありますが、ぜひ映画化していただきたい。

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