直木賞作家『姫野カオルコ』(姫野嘉兵衛)の応援サイト。ディープな読者も初めての方も大歓迎。

ブスのくせに!最終決定版・集英社文庫
2007年1月
新潮文庫版の「ブスのくせに!」が絶版になり、復活が望まれていたが2006年に「ケータイ雑誌the どくしょ」に全面改稿してweb配信。それが今回最終決定版として集英社文庫から発売された。元々単行本は毎日新聞社刊(1995)であり、新潮文庫版が2001年、そして今回と元ネタの鮮度が失われた(雑誌などに発表されたコラムなりエッセイなりがまとめられて単行本になり、数年して文庫になるという成り立ちの宿命)こともあって、今回は流行りのものや旬な芸能人という括りをやめて、固有名はいわゆる普遍的な人物像の例として出してあり、そういう意味では旬なゴシップ話ではない。さらに姫野さん自身が述べているように、本書はエッセイではなくてコラム。
筆者の個人的思い出や、個人的憤りなどは、極力排除しました。エッセイという言い方しか日本の書籍販売ジャンルにはないので、しかたなくエッセイと分類されていますが、「集英社版ブスのくせに」は、エッセイじゃないですね。純然たるといっていいほど、コラムです。
姫野カオルコ(当サイト掲示板より)
確かに基本はロジカルな分析だが、そこはヒメノ式ですからひとひねりもふたひねりもあって、思わず「ムフ・・・ムフフ」と怪しい笑いを誘われる。

さて、ここからジキル式に極私的感想に入りましょ。はい。ぽんっ、と手を打ったのが、日本には二枚目路線のハゲがいないという一文。そもそもハゲそのものが完全にマイナスイメージとして文化に刷り込まれているのが問題。いや、そりゃ私しゃハゲですよ。ですから自己正当化したい部分があるかも。しかしねえ、一時期かつらのCMには露骨な差別意識を逆手に取った路線があったし、最近は科学の進歩で発毛という選択肢もでてきたのは良いんだが、それを選ばずにハゲのままでいることが悪いことのような言い方になったりしているぞ。まあ、あくまで商品の宣伝なわけでそんなに目くじらをたてることではないかもしれないが。

本書で姫野さんは「男はスキンヘッドにすると五割増し」と書いていて・・・実は、これ読んで私もいっそ剃ろうかと本気で思ったですよ。悩んで、悩んで、結局剃れなかったっす。仕事でお客さんと対する時にちょっと問題かなと・・・。だって、田舎でスキンヘッドと言えば老人かヤクザ!と決まっているんだもの。ファッションとしてスキンヘッドを選択する者は皆無。

で、実際は自分で買った電気バリカンで坊主頭に。これはこれで、シャンプーやリンスはいらないし数ヶ月ごとにバリカンをかければ済むしヘアスタイルに悩むこと(ハゲ型によってヘアスタイルの選択は難しい)もないと納得。ところが好事魔多し(言葉の使い方間違えているか)。私の場合はM型プラス後頭部のハゲなんだけど、坊主にすると短いうちは良いのだが、伸びてくると前頭部だけ離れ島のように若干濃い毛の部分ができる。まったくぅ・・・ハゲなのに面倒なことだ、と鏡を見ながら離れ島の毛をハサミでカットしたりする度に、姫野さんの「男はスキンヘッドにすると五割増し」の言葉が思い出されて、いっそ・・・いや・・・やっぱり・・・無理か。



ブスのくせに!・新潮文庫
2001年4月
知らない方は著者名だけ見て、なんだかグラビアだらけの女性誌に(これがワタシ的アンニュイライフ)みたいな文を書く人と思っちゃいけません。硬派です。自分と世の感覚にギャップがあることに自覚的です。そしてその違和感を無理に隠したり、オブラートで包んだりせずストレート勝負。その意味で硬派です。骨太とか言うと当人はいやがるでしょうが・・・。

(この本質的顔ウォッチングエッセイ)っていうのは、帯の宣伝文句で、ほかに(なぜ美人ばかりがソンをするのか? ノリカはどうしてセクシーなのか?)などと書かれています。これは新しい読者層を開拓したい出版社の意向なんでしょうけど、ちょっと無理が・・・。なにせ中には伏せ字なしの四文字言葉48回ほど出てくるし(すいません。ちゃんと数えてないので、だいたいってことで)、スナフキンは性欲が弱くてそれに惹かれる女性は多分性欲がものすごく強いなどとも書かれています。えっ、いったいどんな本だって? 作者がセクシーであると思うのは往時の峰岸徹、岡田真澄、津川雅彦です。理由は(お願いしますと頼めばして下さる感じがするから)ですって。えっ、もっとわからなくなった? 意外に人物の好みはその人の人格を反映するところがあるんです。つまり、作家が普通に今時の人気タレントを好きだったりした場合(わりと多いですけどね)正直面白くないです。つまり作家は意外な人物を好きであってほしいんですね。そこに初めて「なんで?」という疑問が生まれて独自の視点を発見するわけですから・・・。その点姫野カオルコは実にユニークです。

例えば姫野カオルコが好きなのは(ナブラチロワ、浜美枝、若いころのカイル・マクラクラン、デビット・リンチよりは元気なころのデ・パルマ)さあ、何で?誰?と思った人は本屋へ走りましょう。
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