直木賞作家『姫野カオルコ』(姫野嘉兵衛)の応援サイト。ディープな読者も初めての方も大歓迎。

ワルツ・祥伝社文庫
2004年7月
シニカルな笑いとペーソスを隠し味にした大人のための傑作集。結城信孝編。
収録されている作家は「田辺聖子、石田衣良、姫野カオルコ、小泉喜美子、連城三紀彦、横森理香、田中小実昌、森奈津子、有吉玉青、吉行淳之介」と豪華。姫野作品はイーストプレス刊の「蕎麦屋の恋」に入っていた「天国に一番近いグリーン」を改題した「ゴルフ死ね死ね団」

笑いという部分で一編ぐらいはスラップスティック風味のものが欲しかった編者の思惑と姫野さん自身の要望もあっての改題とのこと。・・・しかしまた「ゴルフ死ね死ね団」だもんね。姫野さんが昔の少年漫画好きだからこそのネーミングですねえ。さて、この作品はちょっと誤解を受ける危険をはらんでいます。つまりアンチゴルフの話かと。タイトルがまた「死ね死ね」だし・・・。しかし、この話はゴルフを例えばブランドバッグに代えても、デビッド・ベッカムに代えても、ヨン様でもセカチュー(例の叫ぶやつね)でも成り立つ話です。つまり、猫も杓子も群がる一つの価値基準に対する違和感が主題なんです。そうしたことに興味もない人間がいることすら想像できないほど易々と洗脳(あえてこう言いますが)された人々の無神経な態度に腹を立てても、たいていは「え? 嘘。ゴルフやらないの? ブランドバッグに興味ないの?」と、逆に驚かれたりするのが関の山。 まあベッカムやヨン様は一過性の流行で終わるのでしょうから、ちょっと意味合いが違いますけどね。

ゴルフに関してはスポーツライターの金子達仁氏が面白いことを書いています。世界のゴルフ人口は約6千万人。ゴルフ場は3万1500ヶ所。つまり一ヶ所のゴルフ場につき約1900人のプレイヤーが世界の平均値です。日本は・・・御想像の通り・・・その数、9000人。世界4大トーナメントで日本人が勝てない原因の一つでもあります。打ちっぱなしでいくら練習してもコースで強くはなりません。狭い国土でこれ以上ゴルフ場を増やすわけにもいきませんので、競技としての力をつける手っ取り早い方法は、ゴルフ人口を減らすことになったりします。普通スポーツ全般に言えることですが、競技人口、つまりピラミッドの底辺が大きい程、頂点は強くなるものなのですが、日本のゴルフの場合、底辺だけが肥大しているという異常な状態なのです。

私自身は特にゴルフに興味もなくて、プレーしたこともありませんがどうにもあのゴルフウェアが好きになれないですなあ。あのセンスはどこからきているの?

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