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部長と池袋・光文社文庫
2015年1月
本書は文庫オリジナル、つまり単行本ではなくて最初から文庫で発売されるものです。目次を見て凝った作りだなと思ったのですが、あとがきを読んで納得。確かにPART1とPART2では肌触りと言うか読み味が違いますね。途中にはティータイムという形で短いエッセイが入っています。

さて、池袋ですが・・・。例えば私が高校生の頃、茨城の田舎者にとっては東京の地名として浮かぶのはまず第一に上野(常磐線が発着するから)そして新宿や渋谷、私の場合はそこに楽器屋があった御茶ノ水や銀座が加わるぐらいでしたし、語感も本書で部長が言うようになんだか変と思っていたので読みながら妙に納得してしまいました。

パート2のほうに「ゴルフと整形」という作品がありますが、元々はイースト・プレス社刊の短編集「蕎麦屋の恋」(2000年)に収録された「天国に一番近いグリーン」が、祥伝社文庫のアンソロジー「ワルツ」(2004年)に「ゴルフ死ね死ね団」と改題して収録されたものを改稿して収録されています。以下に「ゴルフ死ね死ね団」の時に私が書いた紹介の一部を再録します。


この作品はちょっと誤解を受ける危険をはらんでいます。つまりアンチゴルフの話かと。タイトルがまた「死ね死ね」だし・・・。しかし、この話はゴルフを例えばブランドバッグに代えても、デビッド・ベッカムに代えても、ヨン様でもセカチュー(例の叫ぶやつね)でも成り立つ話です。つまり、猫も杓子も群がる一つの価値基準に対する違和感が主題なんです。そうしたことに興味もない人間がいることすら想像できないほど易々と洗脳(あえてこう言いますが)された人々の無神経な態度に腹を立てても、たいていは「え? 嘘。ゴルフやらないの? ブランドバッグに興味ないの?」と、逆に驚かれたりするのが関の山。 まあベッカムやヨン様は一過性の流行で終わるのでしょうから、ちょっと意味合いが違いますけどね。

ゴルフに関してはスポーツライターの金子達仁氏が面白いことを書いています。世界のゴルフ人口は約6千万人。ゴルフ場は3万1500ヶ所。つまり一ヶ所のゴルフ場につき約1900人のプレイヤーが世界の平均値です。日本は・・・御想像の通り・・・その数、9000人。世界4大トーナメントで日本人が勝てない原因の一つでもあります。打ちっぱなしでいくら練習してもコースで強くはなりません。狭い国土でこれ以上ゴルフ場を増やすわけにもいきませんので、競技としての力をつける手っ取り早い方法は、ゴルフ人口を減らすことになったりします。普通スポーツ全般に言えることですが、競技人口、つまりピラミッドの底辺が大きい程、頂点は強くなるものなのですが、日本のゴルフの場合、底辺だけが肥大しているという異常な状態なのです。

私自身は特にゴルフに興味もなくて、プレーしたこともありませんがどうにもあのゴルフウェアが好きになれないですなあ。あのセンスはどこからきているの?

今回はタイトルが「ゴルフと整形」となっていたので、もしかしてと期待?していたら、フッフッフ、出てきましたねえ。名作「整形美女」のあの人が・・・。ん?もしかしてこれはいわゆる告知ってやつ?あの「整形美女」が光文社文庫からでるのだそうで非常に楽しみです。

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