集英社文庫「A.B.O.AB」・・・「部屋」より抜粋・・・オスカー・ピーターソンの「If I Were A Bell」。エンディングは吉幾三の「おら東京さいぐだ」。しかしこの「テレビもねぇ、ラジオもねぇ・・・」ってのは、完全にラップミュージックですな。ヨォウ。このイラストは何だと脱力している方が多いかと思いますが、狂牛病問題にかんがみて社会派イラストですぅ。・・・・・はい。
日曜日
午前十一時。
CDの選択に恵比寿(AB型)は悩んでいた。
「いくら彼女がジャズが好きだと言ってたからって
昼間っからコルトレーンってのは重いし、
ピーターソンくらいか・・・・・」
今日ははじめて霧子が部屋に遊びに来るのだ。
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「ラジオが一番いいと思うけど、でも、それじゃあね。
せっかくの訪問者に対して芸がない」
恵比寿はやはりCDでいこうと決めた。
「60年代のフレンチ・ポップスってあたりがしゃれてるけど、
でも、女の子のウケを狙ったと思われてはいやだなあ」
CDラックの前で長いあいだ考え込む。
考え込みすぎて、もはや霧子のことを忘れかけ、
ドアチャイムが鳴ったときには、
「ひゃあっ」
飛びあがるほどあわてて恵比寿が選んだのは結局、
吉幾三だった。