角川文庫・変奏曲「柘榴の章」より抜粋・・・ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第二番ハ短調」後半は何と言いましょうか、いわゆる「おどろおどろした効果音」。アニメーションは朝鮮人参ではありません。解説で姫野さんが「これを読んだあとにラフマニノフを聞きながらセックスをしてほしい」と、おっしゃったことになっていますが、まだ果たせておりません(涙)。そのかわりオナ・・・・おいおい。
洋子は池井の身体をよけるべく身体の位置をずらせた。
カウチの背もたれに触れている左脚は池井の身体を乗せた
ままだが、右脚は自由である。一息ついた後、右脚を大きく
ひろげた。三センチの隙間から洩れる陽が、腿の付け根を
くっきりと照らしだすように。
池井の唇が喉を這った。喉から耳、耳からうなじを這い、
鎖骨のくぼみに指が触れる。
ああ、と洋子は言ってみた。
窓の外に向けて言ってみた。
脚を動かす。池井の腿の内側と洋子の腿の内側が接触し、
さらに脚を動かすと、濃い体毛が洋子の脚をこすった。
脚の内側で相手の脚の形を確かめる。男の脚だと思う。
てのひらを胴にあてる。くびれていない。男の胴だと思う。
窓の外にいる人間も男だ。彼も男の身体を持っている。
はじめて眼を閉じた。
男の身体にきつく抱きつき、窓の外を想った。
「滅茶苦茶にして」
声を高く、細くして、よく聞こえるように言った。
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窓のそばには通り雨を受けた樹木がある。水滴が風に散って、
覗いている彼の顔も濡れているだろうと、想う。
汗をかいたように濡れているだろうと。